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サブリース契約書のチェックポイント

もし、銀行融資の関係などで、どうしてもサブリース契約をしなければならないなら、サブリースの契約書をきっちりとチェックしましょう。

1.サブリース契約書をチェックする前に
以下に記載する内容は、サブリースの訴訟結果を踏まえ、「サブリース会社と契約時点で合意した内容を法的にも有効にするために必要な注意点」を当サイト執筆者なりに考え、その内容を記載するものです。(そもそも、「合意内容を反故にしたい」という不動産会社からの要求を断るために注意点が必要というのもおかしな話ですが、訴訟事例でご紹介した通り、合意内容を反故にしたいという大手不動産会社の主張が法的に認められた以上、対策を練らざるをえません。)
しかし、当ページで記載する注意点には、3つの問題があります。
第一に、当サイト執筆者は、法的専門家で無い事です。従って、実際に契約をする際には、借地借家法に詳しい弁護士さんに必ずご確認下さい。当サイト執筆者も経験のない事項を実行する際は、信頼のおける弁護士さんに相談をしております。
第二に、サブリース契約書を精査し、契約期間中の解約や賃料値下げの禁止を法的に担保したところで、契約先のサブリース会社が倒産してしまえば、それまでです。従って、サブリース会社と契約する場合は、必ず財務内容が高い会社でなければなりません。又、財務内容と利益が共に良い値に見えても、不動産の在庫を多数抱えている会社は、不動産市況が悪化すると資金繰りが急激に悪化する事が多いので、自社及び関連会社に不動産をほとんど保有していない会社を選びましょう。(記憶に新しいところでは、2008年3月に300億の利益を計上したアーバンコーポレイションが同年に倒産した例があります。又、筆者が、ある中堅不動産会社の評点を某大手信用調査会社で調べたところ、非常に良い評点が付けられていましたが、その数か月後には倒産したといった事もありました。)
第三に、当サイトで紹介する案を大雑把に言えば、定期借家契約を使うというものです。しかし、一般的な定期借家契約書を使用した場合、サブリース会社からの中途解約や値下げ要求を法的に拒絶できる代わりに、契約期間中は貸主から値上げ要求をする権利も失ってしまいます。日本ではずっとデフレが続いていますので、インフレの事はついつい忘れがちですが、これだけ金融緩和を行った先進国は他に例がありません。従って、デフレから一転、インフレに転じてもおかしくはない状況にあります。不動産はインフレに強い商品だとよく言いますが、長期間の定期借家契約を結んだ不動産の場合でもその法則は当てはまるのでしょうか?(当サイト執筆者は、おそらく当てはまらないと予想しています。)インフレと金利上昇は同時にやってくるのが常です。単にサブリースに定期借家契約を使うという案では、残念ながらインフレリスクに対するヘッジが全くできていないのです。

以上が、サブリース契約書のチェックポイントで紹介する案の問題点です。ご自身で行動と判断してもらわなければ、これ以上注意を促しても仕方がない第一と第二の問題点と違い、第三の問題点はまだ少し説明の余地があるように思いますので、当ページの最後あたりでもう少し触れてみたいと思います。
またまたデフレに再突入した感のある経済状況(2009年2月時点)の中で、インフレ懸念はあまり議論されていません。しかし、金融緩和をやっと止めたばかりなのに、またすぐに金融緩和を始めるとなると相当なお金がダブ付く事になります。個人的には、金融緩和再開の流れを見て、「もし日本でインフレが始まった時は、2008年後半から2009年前半に経済を急減速させたサブプライム問題よりも大きな経済変動が起こりうる」と警戒を始めたところです。

2.何故、訴訟でサブリース会社の主張が認められたのか?
一体、なぜ契約書に値下げや中途解約を禁止しているにも関わらず、裁判所は、サブリース会社からの値下げ要求に妥当性を認めたのでしょうか。それは、そもそも借地借家法という特別法が、「借主は弱い立場にあるので、保護する必要がある」という趣旨に基づいて作られた法律だからです。オーナーの立場からすると「借主が弱いというのは、一体いつの時代の話をしているんだ。」と思われるのではないでしょうか。その感覚も当然で、大正時代に策定された借地法と借家法や明治時代に策定された建物保護法を基に統合・改良されたのが現在の借地借家法です。オーナーからすれば、自分よりサブリースを行う大手不動産会社や建設会社の方が、規模も大きいし不動産に対する知識も豊富に感じるでしょうが、借地借家法では借主が誰であれ、オーナーの方が立場は強いと一緒くたに定義されてしまいます。
借地借家法の下では、契約書に契約期間中の賃料は増減しないと記載されていても、賃料相場が下がれば賃借人(店子)からの賃料値下げ要求が可能となっていますが、それがサブリースでもそのまま適用されたのです。又、借地借家法では、契約書にどう記載されていても、オーナーの都合で契約を解約する事はできず、解約するには正当事由が必要です。この正当事由というのがくせ者で、私たちからすれば「十分、正当な理由だ」と感じる内容であっても、賃借人保護のために、なかなか認められないのです。例えば、老朽化は正当事由にあたるとされているのですが、建築の専門家からはもちろん、素人目にも取壊しが必要な物件でも取壊しを妥当とするまでの正当事由を完全に満たしているとは認められず、足りない部分は貸主がお金を払えというのです。また、契約書に「契約後5年を経過した後は、貸主から申し出があれば、その半年後に借主は退去しなければならない」というような条文が記載されていても、普通借家契約では無効になる事が一般的です。
その結果、良質な土地を持つ地主などを中心に、借地で貸すのを渋るケースなどが増え、活用が進まなくなる弊害が発生しました。その弊害を改善する為に策定されたのが、このページでご紹介している定期借地契約なのです。(筆者の感覚では、借地借家法そのものを見直すべきだと思います。)

※尚、敷引や原状回復費の請求が無効とされる判例は、借地借家法ではなく消費者保護法の観点からの判決です。

3.サブリースの契約書を定期借地契約にするメリット・デメリット
賃料の増減を互いに請求できる普通借家契約と違い、定期借家契約は契約期間とその間の家賃を法的に固定する事ができます。従って、定期借家契約であれば、建物が損壊・滅失したり、サブリース会社が倒産支払能力不足に陥らない限りは、契約書に記載された賃料からの減額請求を法的に防ぐ事ができるのです。しかし、平成12年に定期借家法が施行された後も、サブリースに定期借家契約の契約書が使用されているという話はほとんど聞きません。これは、「経済情勢によっては、値下げ要求に踏み切れるよう逃げ道を残しておきたい」というサブリース会社の思惑もあるでしょうが、オーナーが勉強不足で、サブリース会社に定期借家契約でのサブリース契約を要望していない事も一因だと思います。(これだけインターネットが発達しているのに、何か問題がないか、全く調べずに契約する人はまだまだ多いようです。)
ここまで当サイトをお読み頂けば、当サイト執筆者を含め、サブリースに反対している不動産会社やコンサル会社がみな口を揃えて、「サブリースにするなら、せめて定期借家契約で契約すべき。」と言っている理由が、ご理解頂けたかと思います。

しかし、上記で当ページの問題点として挙げた第三の問題点(インフレ対策)は、普通契約から定期借家契約へ変更するからこそ、改めて考え直さなければならない問題です。残念ながら、当サイト管理人は、この問題に対する具体的な解決策をこのサイトに記載する段階まで検証ができていません。(正直つい最近まで、デフレによる賃料減額を回避する対策に追われ、インフレ問題について正面から検討する事はほとんどありませんでした。)

執筆者が勤務する管理会社では、「築古物件」や「入居期間が超長期に渡る事もある飲食店舗」などの契約に関しては、遠い将来の立ち退きトラブルを未然に防ぐため、定期借家契約を導入しています。(賃料の値下げ要求の防止が目的でなく、遠い将来の建物取壊時に苦労しない為の事前準備ですので、サブリースでの定借活用と使用目的は異なります。)

執筆者の仕事は、管理物件のオーナーの資産と収益を最大化する事です。その為には、管理物件のリスクを小さくする必要があります。そこで、現在、執筆者の勤務先では、定期借家契約を使いつつ、オーナーのインフレリスクを回避する条文の作成に着手しています。(弁護士さんに相談に行くにも、まずは叩き台がなければ始まりません。)
まだ、実効性や問題点についての法的見解など、弁護士さんに全く確認する前の段階なので、ここで詳しくは記載しませんが、定期借家契約で契約期間は縛りながら、一定以上のCPI値上昇をトリガーとして、賃料の増額を要求できるという条文です。トリガーを設けるのは、少しの変動で賃料をいちいち変動させていると、貸主・借主双方の経理業務が煩雑になってしまうからです。借地借家法では「貸主からのみ賃料の増額が請求できる特約は無効」ですが、定期借家契約の制度を利用すれば、入居者にも納得感のある範囲で、使える契約書がなんとか作れそうな気がしています。

※「サブリース大阪.com」のサイト運営者は、法的専門家ではありません。実際のご決断においては、弁護士などの法的専門家にご相談の上、ご自身の自己責任でご判断頂くよう宜しくお願い致します。